「有期労働契約研究会中間取りまとめ」を読んでいます。

実行委有志で、4月から、厚生労働省「有期労働契約研究会中間取りまとめ」を読み始めました。
第一回の勉強会で読んだ部分でみながひっかかった箇所を挙げると、
◆まず、この「有期労働契約研究会」自体が、「就業構造全体に及ぼす影響も考慮し、有期労働契約が良好な雇用形態として活用されるようにする観点も踏まえつつ、引き続き検討する」(労働政策審議会答申「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」[平成18年12月27日])という方向性をふまえて開催されるに至っていること(開催要項参照)。
→最初から有期労働契約を「活用」していく観点が前提になっている。【おかしい!】
◆有期労働契約が、労働者にとっては「勤務地や責任の度合い等の点で家庭責任の状況など自らの都合に合った多様な働き方の選択肢の一つ」としてあり、結果、「労使の多様なニーズにより用いられてきた」とする認識(p.2)。
→労働者が(使用者側と対等なレベルで)主体的にこの形態を「選択」している、という認識が前提にある。【おかしい!】
◆「本来正社員を希望しながらやむを得ず有期労働契約労働者となっているような者を典型に、先が見えない不安や頑張ってもステップアップが見込めないことなどから、働く意欲の向上や職業能力形成への取り組みが十分でない実態」があることを認め、「このような雇用の不安定さ、待遇の低さ等に不安、不満を有し、これらの点について正社員との格差が顕著な有期労働契約者の課題に対して政策的に対応することが、今、求められている」(p.4)としながらも、そのすぐあとに「有期労働契約は求人、雇用の場の確保、特に、無業・失業状態から安定的雇用に至るまでの間のステップという点で役割を果たしていることを評価することも必要」(p.5)などと、実態とかけ離れた理想像を打ち出して問題に直面する姿勢をいきなり崩している。【結局、腰引けてるじゃん!】
あと、「不満」という言葉づかい(全体で何度も出てくる)が気になる。これだとニュアンスとして、本来構造的な問題が、労働者の「感情」(わがまま?)の問題に回収されてしまう危険性がある。
◆「職業生涯全体を見据え、キャリア形成のために時宜を得て有期労働契約が活用されることで、職業能力の向上に寄与する役割も期待できよう」(p.5)
→【おかしい!美化するな!】
◆企業側が有期労働契約を市場的な「リスク」に対応するために使っている点について、「そのリスクを専ら有期契約労働者の側に負わせることは公正とは言えない」という問題意識を持ちながらも、「有期契約労働者の雇用の安定や公正な待遇等の確保を考えるに当たって、正社員に適用されるルールとのバランスは意識されるべきであるが、本研究会は、正社員に適用されるルールそのものを論ずる場ではない」(p.5)と明言。【逃げすぎでしょ!しかもいきなり言い訳!】
「有期契約労働者について、有期労働契約に関わる諸課題に即して有期労働契約の在り方に関するルールを検討する必要がある」(p.5)
→あくまで正社員とは「別立て」で論じる構え。正社員の利害代表団体から反発を受けないための配慮?

★話し合ったこと。
正規雇用と分けて、有期雇用だけを取り出すのはなぜか?
本当にかっちり正規雇用と有期雇用と分けて話ができるのか。ルーズな職場もある。仕事が同じなのに契約期間があるかないかという理由でルールができてしまっていいのか。
有期雇用のルールが使用者側に有利にできてしまうとそれに縛られてしまって、労働者の権利主張が難しくなるのではないか。契約は契約だと押し切られてしまうのではないか。
非正規VS.正規の対立軸を意図的に出さないようにしている。
個別の労働法制はいつも名目は○○労働者の「保護」だが、実は労働者を差別的に分断している現状の正当化でしかないのではないか。

基本的には、「すでに使用者側が労働者を使い捨て――「流動性」の確保――するために有期雇用を利用している現状を追認するものではないか」という印象を強く受けました。

次回は、この「中間取りまとめ」の論証根拠とされる「平成21年有期労働契約に関する実態調査」結果について検討する予定です。

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