「<はたらく>“公務員”でも不安定 自治体の臨時・非常勤職員」

■<はたらく>“公務員”でも不安定 自治体の臨時・非常勤職員
 (2010年9月3日『中日新聞』【暮らし】)
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2010090302000047.html
 全国の自治体で、臨時や非常勤の職員が増えている。行革に伴う正規職員の削減などが背景にあり、労働に見合わない低賃金を強いられている場合も多い。だが、税金の使い道に注がれる市民の視線は厳しく、“官製ワーキングプア”の悲哀は伝わりにくいのが実情だ。 (片山健生)
 愛知県西部の自治体の清掃部門に在籍する男性(45)は、昨夏のボーナスシーズンに市民から浴びせられた一言が忘れられない。
 「公務員はたくさんボーナスをもらえていいよな」。街中のごみ集積場でペットボトルをパッカー車で回収しているとき、通り掛かった年配者が、うらやみとも嫌みともつかない口調で発した。
 だが男性は、日給一万円で働く一年契約の臨時職員。勤務のない年末年始は生活費の工面に頭を悩ませ、年度末には契約が更新されるか気に病む境遇だ。
 同じ作業服で、同じ仕事をしている正規職員と違い、ボーナスにも縁はない。「反論してこじれると次の集積場に着くのが遅れると思い、苦笑いしてその場を離れましたが…」と振り返る。
 契約更新を重ねて勤務は六年目に入るが、日給は百円ほどしか上がっていない。年収は二百五十万円に届かず、妻のパート収入がなければ生活が成り立たない。前職の土木作業員時代に痛めた腰の再手術を近く控える。「貯金はないので、百四十万円ほどの費用は借金して工面するつもりです」
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 総務省によると、全地方自治体の非正規職員は二〇〇八年四月時点で四十九万八千人に上り、〇五年の調査より四万二千人増えている。正規職員は同期間で十四万三千人減っており、削減分の一部を安価な労働力で補ったとみられる。
 全日本自治団体労働組合(自治労)は〇八年、非正規職員について全自治体にアンケート。千百四自治体(所属する非正規職員数約三十四万人)から回答を得た。日給・時給制職員の時間当たりの賃金は千円未満が73・8%=グラフ、月給制職員の賃金は十六万円未満が58・7%。年収二百万円未満のワーキングプア(働く貧困層)は、八割前後に上るとみられる。
 一年以下の契約期間がほとんどだが、継続勤務一年以上の人が60・3%。三割近くは「常勤職員と同じ」勤務時間だが、昇給制度がある人は一割もいない。低賃金で常勤的な働き方をしていることが分かる。空いた時間で別の仕事をしようとしても、兼職が制限されている場合が多い。
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 労働政策研究・研修機構の荻野登・調査解析部次長は「自治体予算が縮小する中、非正規職員を使わなければ回っていかないのが現実で、正規職員と同じ勤務内容や役割を求めている自治体は多い」と語る。非正規職員の賃金は低く抑えられ、手当を制限した地方自治法の規定などを理由に、通勤手当が支給されない事例もあるといい、「同じ労働には同じだけの賃金を支給する制度が公務職場にも必要」と訴える。
 三重県全自治体を対象に毎年、非正規職員に関するアンケートをしている県労働組合総連合の芳野孝副議長は「公務員の非正規職員の低い賃金が、ハローワークなどの求人票で公開される民間企業の賃金の引き下げにつながっている」と指摘。民間労働者にとって、官製ワーキングプアは、対岸の火事ではないとの見方を示している。▲

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