「国立大:法人化後医系・文系で研究の質低下」

■国立大:法人化後医系・文系で研究の質低下 学部長調査
 (2010年3月30日15時00分『毎日新聞』)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100330k0000e040078000c.html
 04年度に始まった国立大法人化後、医歯薬学系と文科系の学部で研究の質の低下や職場環境の悪化が目立ち、学部間の格差が生じていることが、国立大学財務・経営センターによる全国立大の学部長を対象とした調査で明らかになった。
 調査は08年12月~09年2月、全国立大86校の学部長を対象に実施。7割が回答し、理工系▽農学系▽文科系▽医歯薬学系▽その他に分類して解析した。
 分析結果によると、論文・学会発表の数が、医歯薬学系では「(法人化前より)減った」との答えが57.7%、文科系も34.5%に上り、それぞれ「増えた」を上回った。理工系、農学系は「増えた」との回答が多かった。「研究の質」では、理工系と農学系は「向上した」が多かったが、医歯薬学系と文科系は「低下した」が上回った。
 「職場の雰囲気」が「悪化した」との回答は、医歯薬学系47.1%、文科系45.9%と、それぞれ「良くなった」を大きく上回り、悪化の割合が理工系、農学系より高かった。
 医歯薬学系は、法人化によって付属病院の経営改善を求められ、教員の仕事量が急増。文科系は、国からの運営費交付金が減る一方、理科系に比べ外部資金の獲得が難しいことなどが背景にあるとみられる。【永山悦子】▲

『ふぇみん』に集会記事

『ふぇみん』2918号(2010.3.15)に、
「4面-2 なんで有期雇用なん!? 8大学の職員 ネットワーク化目指す」
という記事が掲載されました。
http://www.jca.apc.org/femin/
cf. http://extasy07.exblog.jp/12367473/

「国立大法人化:経営側は評価、研究者は否定的」

■国立大法人化:経営側は評価、研究者は否定的--財務・経営センター調査
 (2010年3月14日『毎日新聞』東京朝刊)
http://mainichi.jp/life/edu/news/20100314ddm002100119000c.html
 ◇学長「よい結果」66% 学部長「マイナス」51%
 04年度に始まった国立大法人化について、全86大学の学長の3分の2が肯定的に評価する一方、研究現場を預かる学部長の半数は研究面で否定的な反応を示したことが、国立大学財務・経営センターのアンケート調査で判明した。新谷(しんや)由紀子・筑波大准教授(科学技術政策)らの調査でも現場教員の6割以上が研究や大学運営に悪影響があったと受け止めており、大学トップと現場の意識の乖離(かいり)が浮き彫りになった。【西川拓、江口一】
 国立大学財務・経営センターの調査は08年12月~09年2月、全国立大86校の学長や学部長らを対象に実施。全学長と学部長の7割が回答した。
 学長の66%は「自校によい結果をもたらしている」と回答したほか、「大学の個性化」「管理運営の合理化・効率化」など15項目中7項目で8割以上が自校の法人化をプラス評価。「研究活動の活性化」「競争力向上」など5項目でもプラス評価が6割を超えた。逆に研究活動の活性化について学部長の21%は「マイナス」、30%は「ややマイナス」と答えた。
 一方、新谷准教授らは08年8月、全国の国立大の自然科学系の教員1000人を無作為抽出してアンケートを実施、183人から回答を得た。
 69%が予算配分の削減など「研究に悪影響があった」と答えたほか、「教員や部局の意思が反映されない」「教員が減り授業コマ数が増えた」など、「大学運営」で66%、「教育」で51%が悪影響があったと回答した。
 大学から教員に配分される基礎的な研究費は、回答者の平均で法人化前の年約150万円から法人化後は72万円余に半減したことも分かった。研究テーマの変更や小規模化を余儀なくされたケースも多く、こうした不満が法人化への低評価につながったとみられる。
 国立大学財務・経営センター研究部の水田健輔教授(高等教育財政)は「法人化後、教育・研究の現場がどれだけ傷ついたかを明らかにすべきだ。国立大が果たすべき役割や位置づけとそれを支える土台作りを国全体で考える必要がある」と指摘する。
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 ■解説
 ◇変化急激、現場が疲弊
 国立大は法人化によって「自立」と「自律」を求められるようになった。各大学は予算や人事面での学長裁量を拡充し、改革に乗り出している。だが、法人化への評価が学長と一般教員でこれほどかけ離れていることは、経営側の思惑とは裏腹に、急激な環境変化で現場が疲弊している事実をうかがわせる。
 現場教員への調査をした新谷由紀子・筑波大准教授は背景として、「法人化が、財政難からきた公務員削減など国の行財政改革の一環として実施された側面が強いためだ」と指摘する。
 国立大にも06年度から5年間で5%の人件費削減が課され、全大学の収入の半数を占め大学運営の基盤となる国からの運営費交付金は今年度までに計720億円が削られた。実に北海道大と名古屋大の09年度交付金合計分にほぼ相当する額だ。
 このため、各大学は法人化に伴い拡大した国の競争的資金や、企業からの研究費の獲得に躍起になった。さらに近年、主として産業界から大学卒業生の「質の保証」を求める声が高まり、教育や就職指導に力を入れる大学も増えた。
 研究と教育の両面で「成果」を求められるプレッシャーは現場教員に重くのしかかる。
 資金獲得の書類準備や学生の教育に時間を割かれるため、文部科学省の調査では、大学教員の07年度の研究時間は、法人化前の01年度に比べ2割減った。研究費や研究時間を削られた現場教員の間には閉塞(へいそく)感が漂い、東海地方のある理系教員は「法人化していいことは何一つない」とまで言い切る。
 鈴木寛・副文科相は1月、法人化した国立大の第1期中期計画が3月末で終了するのを機に「法人化の成果や課題を検証したい」と表明した。
 現場の疲弊が続けば、多くの分野で人材を輩出してきた大学の質の低下を招きかねない。文科省は学長ら経営側だけでなく、一般教員や職員、有識者からも意見を聞く方針だ。こうした声を率直に受け入れ、現場教員の負担感を取り除くことが求められる。【西川拓】
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 ■ことば
 ◇国立大学の法人化
 国立大学法人法に基づき04年4月、全国89(当時)の国立大が従来の国の付属機関から、独立した法人に移行した。各大学は学外者を入れた経営協議会を設置し、文部科学相が認可した中期計画(6年間)に沿って大学を運営、文科省の評価委員会の評価を受ける。運営費交付金(09年度計1兆1695億円)は国から支給されるが、学長の権限や大学の自主性は強まった。10年4月から第2期の中期計画に入る。▲

京大「非正規職員2人雇い止めに」

■非正規職員2人雇い止めに――京大、3月末で
 (2010年03月26日(金)『京都新聞』)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P20100326000100&genre=C4&area=K00
 京都大の非正規職員が通算5年で「雇い止め」となる問題で、新たに導入された公募による再雇用制度に応募した農学研究科の非正規職員2人が非採用となり、3月末で雇い止めになることが26日、分かった。
 農学研究科などによると、職員2人は図書の仕事をしており、3月末で通算5年となるため研究科が4月からの雇用について公募を実施、2人は応募したが、学外からの応募者2人が採用された。同研究科は「面接で基準に従って選考した」としている。
 京大職員組合のまとめで、新制度で少なくとも4人が5年を超えて再雇用されており、「新制度は前進だが不十分」としている。▲

「国立大法人化の功罪/5止 描き切れない将来像」

■大学大競争:国立大法人化の功罪/5止 描き切れない将来像
 (2010年3月19日『毎日新聞』東京朝刊)
http://mainichi.jp/life/edu/news/20100319ddm002100034000c.html
 「(国立大法人化の)背景に、(競争や市場原理を重視する)新自由主義思想で大学は変わらなければならないという考えがあった。法人化後の影を確認することが大事だ」
 2月17日、文部科学省の国立大学法人評価委員会総会。委員の寺島実郎・日本総合研究所会長が口火を切ると、他の委員も「行財政改革と重なり、(大学を活性化するはずだった)法人化の効果はかなり減殺された」「(外部資金を求め)大学の先生が浅ましくなった」「日本の高等教育が競争力を失いつつある」と続けた。
 国立大法人化は、行財政改革の一環として始まり、国からの運営費交付金が毎年1%削減された。国立大学法人法には「高等教育への財政支出の充実」などへの配慮を求める衆参両院の付帯決議があったが、一顧だにされなかった。
 浜田純一・東京大学長は3月3日、国立大学協会長に再任された際の会見で、「法人化で大学間格差が広がったのは事実」と認めた上で、「先の見えない時代だからこそ、大学が日本を支える役割は大きい」と訴えた。
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 「運営費交付金の削減方針を見直します」。昨夏の総選挙で民主党が作成した政策集の言葉だ。ところが、政権交代後も国立大への風向きに変化は感じられない。来年度予算案の運営費交付金も前年度比0・94%減と結局、減らされた。
 文科省幹部は「政策集は次の総選挙までに実現すべき政策。今回は、高校無償化という政権公約を実現する約3900億円を工面する必要があった。国立大がまったく無傷、というわけにはいかなかった」と明かす。
 来年度以降の見通しについても、財務省幹部は「国立大の予算総額は外部資金の獲得などで膨らんでいる。運営費交付金が本当に絞れないぞうきんか、という議論は今後も必要」と冷ややかだ。
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 現政権は、どんな「国立大の将来像」を描いているのか。
 鈴木寛・副文科相は1月、国立大の第1期中期計画が今年度で終わるのを機に「法人化の成果、今後の課題を検証したい」と、作業部会設置を表明した。
 鈴木氏は毎日新聞の取材に「国立大は、文化や価値観を生む拠点として重要だ。前政権の(運営費交付金の)削減方針は撤回し、これからどう増やすかを考えたい」と答えた。さらに少子化時代の国立大の数について、「いつも絞る話、削る話では現場の疲弊を招く。そんなメッセージは出さない」と明言した。一方、「どのように社会に貢献するか、大学自身が描き、国民に発信してもらいたい」と注文もつけた。
 国立大は、今後も社会から税金を投入する対象として認められ、存続できるのか。国民は、そこに何を求めるのか。岐路に立つ国立大は4月から2期目の中期計画へこぎ出す。=おわり(この連載は永山悦子、西川拓、江口一、河内敏康、高野聡、曽根田和久が担当しました)▲

<ベーシック・インカム日本ネットワーク>設立集会

■最低所得保障「ベーシック・インカム」 普及へ「日本ネット」設立
 (2010年03月24日(水)『京都新聞』)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P20100324000022&genre=G1&area=K00
 すべての人に最低所得を保障する概念「ベーシック・インカム」の普及や学術的な研究の推進を目指す「ベーシック・インカム日本ネットワーク」の設立集会が27日午後1時15分から、京都市上京区の同志社大新町キャンパスで開かれる。
 ■大学教授ら設立、同大で27日集会
 ベーシック・インカムの世界ネットワークは2004年に設立された。米国やオーストラリア、欧州の各国などでも、研究者や市民団体のメンバーなどでネットワークが組織されている。日本でも、京都府立大公共政策学部の小沢修司教授、同志社大経済学部の山森亮准教授たちが中心となって研究会を重ね、約20人の研究者で日本ネットワークを設立することにした。
 年1回の大会や定期的な研究会を開き、ホームページからの情報発信なども行うことにしている。
 ■社会保障の仕組み問う
 設立集会では、障害者インターナショナル日本会議の三澤了議長をはじめ障害者・女性団体のメンバーがベーシックインカムへの期待を語る。26、27日には同志社大で、世界の研究者を招いてシンポジウムも開かれる。
 山森准教授は「今の日本では、障害者や働くことができない人たちの一部にしか所得保障ができていない。ベーシックインカムの議論によって、手詰まりになっている現在の社会保障の仕組みを問えるのではないか」と話している。
 ■一律給付に賛否交錯
 ベーシック・インカムは「基本所得」とも呼ばれる。貧しい人も富める人も、働く人も働かない人にも、すべての個人に無条件で生活に必要な所得を保障する構想だ。
 シンプルな発想で歴史も古いが、先進国で失業が慢性化し、年金や社会保険といった福祉国家の社会保障施策が行き詰まる中、にわかに注目を集めている。政府が国民全員に個人単位で、無条件で生活できる額を現金給付する。代わりに生活保護や失業保険のような制度は不要になる。
 1960年代の米国の公民権運動や英国の女性運動でも提案されて世界に広がり、欧州の一部の国では政府レベルでも議論されている。
 ベーシック・インカムの議論が幅広い関心を集めるのは、政策的な実現可能性だけでなく、一律給付という単純な要求だけに、働くことへの価値観や公平な分配とは何かを問い直す「ものさし」になる点にある。
 「重労働をする人がいなくなるのでは」「ばからしくて働かない人が増えるのでは」「財源は」といった批判もあるが、個人給付であることから、家事労働や家族介護といった無償労働、障害者福祉、生活保護、最低賃金などの問題点も浮き彫りにする。
 新自由主義や社会主義、フェミズムなどの立場を超え、ベーシック・インカムへの賛否が交錯する状況が生まれている。▲

★BIJN 設立集会・前夜祭・設立記念シンポジウム
 → http://basicincome.gr.jp/a/20100326.htm

『生活保障――排除しない社会へ』

■今週の本棚:中村達也・評 『生活保障--排除しない社会へ』=宮本太郎・著
 (2010年3月21日『毎日新聞』東京朝刊)
http://mainichi.jp/enta/book/news/20100321ddm015070008000c.html
 (岩波新書・840円)
 ◇「網」だけでなく「綱」自体が危うい時代
 セーフティネットという言葉が新聞紙上でも目につくようになったのは、九〇年代末以降のことであった。当初は、「サーカスの空中ブランコや綱渡りで、演者の落下に備えて下方に張っておく網」とか「安全網」といった説明が付されて失業手当や生活保護などが論じられていた。もちろん現在では、そんな説明なしでも十分通じるようになった。セーフティネットの認知度が、それだけ高まったからにちがいない。
 しかし、落下してきた人を待ち受ける安全網というのでは、いかにも受身的だ。かつてシュレーダー独首相が「セーフティネットからトランポリンへ」というスローガンを掲げたことがある。落下した人を、トランポリンによって上のロープに投げ返すような政策が必要だというのである。職業訓練やカウンセリングや職業紹介など、積極的労働市場政策と呼ばれるものによって、人々を再び労働市場に向かわせるというわけである。
 実は、こうした発想は、上に張られたロープが最後まで渡りきることのできるものであることが暗黙の前提となっている。ところが今や、少なからぬ人々が、向こう側まで渡りきることのできるロープを見出(みいだ)せないでいる。まずロープの本数が不十分、つまり労働需要が不足している。ロープが細すぎて危険、つまり賃金水準が低いなど処遇が悪い。そして多くのロープが途中で切れている、つまり有期雇用や派遣労働など不安定就労が拡(ひろ)がっている。セーフティネットやトランポリンを準備するだけでなく、しっかりとしたロープを張ること、つまり雇用と社会保障を連携させて生活保障を再設計することこそが重要。これが著者の立場である。
 その際に注目するのが、スウェーデンの経験である。政府は、人々が失業や病気、知識の不足などを乗り越えて就労し社会に参加する条件を提供する、つまり「排除しない社会」という考え方。一方、人々は就労を通じて納税者として福祉国家を支える、つまり社会契約的な関係。そして、各種の給付を各人の現行所得に比例させることによって、人々の労働意欲に報いる。スウェーデンのような「大きな政府」が納税者の支持を得てきたのに対して、「小さな政府」を求めるアングロサクソン諸国で納税者の反乱が起きたその理由が解き明かされる。
 ただしこの本は、スウェーデン・モデルの礼賛でもその勧めでもない。むしろ著者は、スウェーデンが転機を迎えていることを強調する。グローバル化と脱産業化が進む中で多くの産業で省力化が進み、しだいに労働力を吸収できなくなっている。経済が成長するその一方で失業率が下がらない「雇用なき成長」に陥っている。九〇年代以降のスウェーデンでは、失業手当や公的扶助を受給する人、職業訓練を受けても就労に結びつかない人など、労働市場の外部に留まる人が高止まりしている。たとえ積極的労働市場政策を進めても、産業や企業の側に労働力を受け入れる場がなくては、生活保障はままならない。オバマ政権のグリーン・ニューディールに見られるように、持続可能な雇用の場を創出しそれをどう拡げてゆくかが課題となっている。もちろんこれは、日本の現状にとっても重いメッセージである。しかし、より長期で考えるならば、労働時間の短縮(したがって自由時間の増大)によってより多くの人々が仕事を分かち合い失業をなくす途(みち)、つまり「より少なく働き、より良く生きる」といった選択肢もありうると思うのだが、どうであろうか。▲

「東奥学園高訴訟 高裁「教員雇い止め無効」」

■東奥学園高訴訟 高裁「教員雇い止め無効」一審判決取り消す
 (2010年03月20日土曜日『河北新報』)
http://www.kahoku.co.jp/news/2010/03/20100320t23026.htm
 学校法人東奥学園が運営する東奥学園高(青森市)の公民科の男性教員(27)が雇い止めの無効を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は19日、請求を棄却した一審青森地裁判決を取り消し、雇い止めの無効を言い渡した。
 小野貞夫裁判長は「雇用契約が3回更新されていて、男性教員が雇用継続を期待することに合理性がある」と判断。法人が「始末書での約束に反し、婚約者と同居を続けた」とした主張には、「約束に反したとまでは言えない」と述べた。
 一審判決は、継続雇用への期待を認めた上で、始末書に反して婚約者と同居を続けたと認定。「社会科の教員として、資質に重大な疑問を抱かせる行為だった」として、法人側の雇い止めに合理性があったと判断した。
 判決によると、男性教員は2004年4月に1年契約で同学園に採用され、08年3月29日までに契約を3回更新。同年1月、法人に申告していた住所とは別の婚約者(現在の妻)宅から通勤していたことが発覚し、戒告処分を受け、雇い止めを通告された。▲

NPOでの大量雇い止め

■いわてNPOセンター 職員大半雇い止めへ
 (2010年03月19日金曜日『河北新報』)
http://www.kahoku.co.jp/news/2010/03/20100319t33032.htm
 不祥事が相次いだ盛岡市のNPO法人「いわてNPOセンター」が、大半の職員と雇用契約を4月以降は継続しないことを決め、通知し始めたことが18日、分かった。
 センターによると、職員は正規と非正規合わせて57人で、ほとんどが3月末で契約が切れる非正規。関係者の話ではこの大半が雇い止めの対象で「40人規模の人員削減になる」との見方もある。
 岩手県は、センターに委託した事業について新年度の契約を更新せず、県事業への6カ月間の応募停止も決めている。センターは、受託してきた国などの事業も本年度で終了するケースが多いため、雇用の継続は難しいと判断したとみられる。
 センターは河北新報社の取材に、雇い止めの通告を始めたことを認めた上で「対象者すべてに伝え終えておらず、まだ公表できない」と話した。▲

『京都大学新聞』の集会記事

『京都大学新聞』に集会の報告記事が載りました。

■有期雇用に「NO!」 大学非正規職員らが集会(2010.03.16)
http://www.kyoto-up.org/archives/965

「有期雇用――差別的な脱法行為に規制を」

■有期雇用――差別的な脱法行為に規制を
 (2010年3月19日『朝日新聞』東京版朝刊17面[私の視点])
   大椿 裕子[おおつばき・ゆうこ]
   (関西学院大障害学生支援コーディネーター)
 有期雇用が大学に広がっている。私も関西学院大を3月末に雇い止めとなる1人だ。京大で有期雇用撤廃無期限ストをする非常勤職員2人らと2月末に大阪で「なんで有期雇用なん!? 大学非正規労働者の雇い止めを許さない関西緊急集会」を開催した。非正規労働者ら100人が北海道、関東、東海からも呼びかけに応じて集まった。
 数年で一律に雇い止めとなる有期雇用は私立大では1990年代から始まり、国立大にも04年の法人化以降その波が押し寄せた。8割以上が女性で女性労働の搾取の問題でもある。今では20代・30代の女性・男性が置かれる当たり前の労働環境になってきた。
 私の雇用は最長4年とされて、障害のある学生の支援を担うコーディネーターとして勤務している。雇用期間が4年で終了することに疑問を抱いて個人加入できる労働組合に入り、昨年から大学側と計6回に及ぶ団体交渉をしてきた。大学側に継続雇用する意思は全くなく、団交は決裂。このままでは3月末解雇は避けられない。
 毎年、一定数の障害学生入学を見込み、支援する専門部署を設置した以上、業務は今後も継続する。有期雇用とする根拠を尋ねても「新しい知識と技術を持った人材を4年ごとに刷新するのが本学の重要な人事政策」と繰り返すのみ。「有期雇用であることに納得して契約したのだから、それは自己責任である」と言う。「納得して契約した」に私は強烈な違和感を持つ。全国で働く障害学生支援コーディネーターのほとんどが3~5年の有期雇用だ。私たちに有期雇用以外の選択肢は初めから与えられていない。
 最初は、確かに有期雇用と分かって契約したのは私だと自分を責め、「私は不当な扱いを受けているのではないか?」という疑問や怒りを封じ込めていた。何度となく心が揺れ動きながら「そもそも、恒常的な業務を有期雇用にしていること自体が問題だ」という確信にたどりつくまでには多くの時間が必要だった。
 数年ごとに雇い止めで人を入れ替えるのは、反復更新による更新期待権が生じないようにする方法だ。集会で基調講演をお願いした脇田滋・龍谷大教授は、有期雇用は労働契約法16条「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用[らんよう]したものとして、無効とする」に反する脱法行為と指摘する。正規職員と比べものにならぬ低賃金で働かされる差別的な待遇を撤廃するためにも、法的な規制と抜本的な制度の組み替えが急務である。
 人を育てず、働く力を貧困化させる有期雇用のシステムを、次の世代に引き継がないためにも、今私たちは声を上げていかなくてはいけない。▲

「春闘集中回答、「非正規」改善は遠い春」

■春闘集中回答、「非正規」改善は遠い春
 (2010年3月17日15時56分『読売新聞』)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100317-OYT1T00717.htm
(【写真】各労組からの報告を受ける金属労協の職員(17日午前、東京・中央区で)=清水健司撮影)
 今春闘で、自動車や電機など主要企業の集中回答日となった17日、各社は軒並み、労組側の要求通り「定期昇給(定昇)維持」を回答した。
 大手企業の労組にとっては、すでに制度化されている定昇を維持するという「最低限の要求」が満たされた形。今春闘では、これまで「蚊帳の外」だった非正規雇用労働者にも光が当たるはずだったが、成果を得るまでには長い道のりがありそうだ。
 「政権交代で連合と政府の距離は近くなったが、非正規労働者を『いつでも替えがきく存在』と見ている企業の意識が変わらない限り、待遇は変わらない」。首都圏でスーパーを展開する小田急商事の労働組合員の一人で、パート労働者の中河原典子さん(61)は17日朝、そう話した。
 今春闘で連合は、非正規雇用労働者の処遇改善を要求の柱の一つに掲げたが、多くの労組は今も正社員が中心。そんな中、小田急商事の労組は、組合員約3100人のうち、スーパーのレジや売り場などで働くパート従業員が8割以上を占める。牧直樹委員長(46)は「パート従業員の場合、まだ春闘の入り口に立ったばかり」と語る。
 同社労組がパートの組織化を始めたのは2006年。当初は、労組内にも会社側にも「パートを加える必要があるのか」と疑問視する声があった。だが、正社員と同じ仕事をしているのに、パートには忌引休暇や弔慰金がなかった。こうした待遇格差が、正社員とパートの関係をぎくしゃくしたものにしていたという。牧委員長は「職場の雰囲気を改善するためにもパートの組織化が必要だった。正社員、パートの区別なく会社全体を良くすることが労組の役割」と強調する。
 07年春闘からパートについて要求を始め、少しずつ待遇改善を図った。今春闘では、正社員の定昇にあたる年1回の昇給を確実に実施することや、正社員にはある誕生日の有給休暇を認めるよう求めている。
 自動車や食品などの工場に約5000人を派遣している「アウトソーシング」(大阪)では昨年4月に労組が設立されたが、約120人の組合員全員が正社員の内勤スタッフ。派遣労働者は勤務先が全国に散らばっているため、準備が間に合わず、今春闘では派遣に関する要求も見送った。それでも山内渉委員長(48)は「派遣も含めた全社員が安定した暮らしが確保できなければ、会社は成長しない」と派遣労働者の組織化を急ぐつもりだ。
 派遣労働者の声は依然として切実だ。昨年5月に雇い止めされた元派遣労働者の女性(29)はこの日朝、「正社員中心の労組は私たちに何もしてくれなかった。非正規労働者に目が向いたことは一歩前進だが、数多くの派遣切りを許した事実は変わらず、対応が遅すぎた」と話した。▲

「有期労働契約で中間報告」

■有期労働契約で中間報告=雇い止め問題で-厚労省研究会
 (2010/03/17-20:06 時事ドットコム)
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2010031700959
 厚生労働省の「有期労働契約研究会」(座長・鎌田耕一東洋大教授)は17日、今後の施策に関する中間報告をまとめた。有期契約労働者をめぐっては、2008年秋のリーマン・ショック後に契約更新しない雇い止めが問題化しており、正社員への転換や均衡待遇などの検討の必要性を指摘している。
 中間報告は、正社員と同じ職務に従事しながら賃金など労働条件が低い有期契約労働者が多いことを踏まえ、一定の条件を満たす場合、正社員への転換を推進する措置の義務付けなどを今後の課題として指摘。また、現在は契約の更新回数を規制していないため、一定の上限を設けた上、上限を超えた際は「無期労働契約とみなす」などとして、雇用の安定を図る措置の検討を求めた。▲

厚生労働省:「有期労働契約研究会中間取りまとめ」について

■厚生労働省:「有期労働契約研究会中間取りまとめ」について
★ → http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000004psb.html

03/19「なんとかしなきゃ!非正規労働問題」@札幌

◆反貧困ネット北海道主催
 非正規労働問題シンポジウム開催のお知らせ

「なんとかしなきゃ!非正規労働問題」

日時:2010年3月19日(金) 午後6時30分より
場所:かでる2・7(中央区北2条西7丁目)710会議室
プログラム
 ・報告「非正規労働問題の現状と労働組合の役割――非正規労働者調査に取り組んで」
  川村雅則(北海学園大学准教授)
 ・非正規労働者からの訴え
 ・行動提起
参加費(資料代):500円(反貧困ネット北海道の会員は無料)
事前申込不要
問い合わせ先;反貧困ネット北海道 電話/FAX 011-533-3778 Mail:hanhinkondo@yahoo.co.jp

[ http://www015.upp.so-net.ne.jp/hanhinkondo/ ]

「パートの失業給付、「退職勧奨」で不利益も」

■パートの失業給付、「退職勧奨」で不利益も
 (2010年3月17日『読売新聞』)
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/20100317-OYT8T00193.htm
◇即答せずに情報収集を
 会社の倒産や解雇などで失業に直面した時、雇用保険の失業給付(基本手当)は再就職までの安全網だ。
 パート労働者の場合、短期の契約を繰り返したり、保険に加入していたかわからなかったりして、給付に不安を感じることもあるだろう。制度をしっかり理解しておきたい。
 パートの事務員として働くA子さん(58)は2月下旬、契約期間の満了を前に会社から「人員削減のため2月末で退職し、必要人数を募集するので再度応募するように」と伝えられた。指示に従い退職し、再応募したが「採用されなければ失業。失業給付を受ける時に不利になるのでは」と不安を募らせる。
 失業給付は、雇用保険に加入していた労働者が失業時、生活を心配せずに仕事を探し、再就職できるよう現金を給付する仕組み。支給額は離職した日の直前6か月の賃金(賞与などを除く)の約45~80%、日数は勤続年数、離職時の年齢、離職理由によって決まる。
 自分の意思(自己都合)で離職する人は、解雇や倒産など会社都合で離職する人よりも受給要件が厳しいほか、給付開始が会社都合の場合よりも、原則3か月遅くなる。
 パート労働者の加入要件は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、雇用見込み期間が6か月以上あること。国は解雇・失業が増えていることを受けて、雇用見込み期間を「31日以上」に緩和するなどの改正案を、今国会に提出している。
 特定社会保険労務士の池田直子さんは「働き続けたいのに労働契約が更新されずに離職した非正規労働者は、『特定理由離職者』として、給付日数を手厚くする暫定措置が昨年から始まっています。A子さんも特定理由離職者と認められるのでは」と話す。「期間満了による離職でも、会社都合の離職と同様に受け取ることができる可能性がある。ハローワークで失業給付の手続きを取る際に、退職の経緯を説明してみて」と助言する。
 東京都労働相談情報センターには昨年4月から今年2月まで、雇用保険に関する相談が約4000件寄せられた。非正規労働者は約3割を占め、年々増加傾向だという。
 労働相談係長の関口広行さんによると、最近目立つのが「退職勧奨」に絡む相談という。勤め先から「辞めてもらいたい」と言われただけで「解雇を言い渡された」と思い込み、「分かりました辞めます」と返答して退職届まで書いて離職してしまう。自己都合退職扱いになり、失業給付で不利益を被ったことに後で気付いたという例が相次いでいるという。
 「辞めてほしいと言われてもあわてて即答せず、『家族と相談したい』などと言って、相談窓口などで情報を集める余裕を持って」
 そして失業給付のトラブル回避のために〈1〉雇用契約時に労働条件通知書をもらい、労働条件を確認する〈2〉毎月の給与明細票で保険料が支払われているかを確認し、明細票も保存する〈3〉解雇の場合は退職届を書かないこと――などを勧める。
 「合理的な理由がない解雇は無効です。制度をよく知っておくことで、辞めずに済んだり失業給付の条件が変わったりすることがある。一人で悩まず、十分な情報収集を行ってほしい」と助言している。▲

「国立大法人化の功罪/2 非常勤「パート以下」」

大学大競争:国立大法人化の功罪/2 非常勤「パート以下」
 (2010年3月16日『毎日新聞』東京朝刊)
http://mainichi.jp/life/today/news/20100316ddm002100044000c.html
 千葉県柏市の東京大物性研究所の実験室に、毎日夜にならないと現れない研究者がいる。低温下での物質の性質を研究する鳥塚潔さん(53)だ。東大と雇用関係はなく無給だが、「外来研究員」という肩書で研究する。
 鳥塚さんは、埼玉大と東京都内の二つの私立大、計3大学で物理学などを教える非常勤講師を掛け持ちして生計を立てる。研究時間は授業後の夜や週末。授業1コマ(90分)の給与は1万数千円。今年度後期は週計14コマをこなした。「移動や授業の準備で実験の時間がとれない。だが、大学は授業がない期間も長く、週10コマ以上ないと生活が厳しい」と話す。
 法人化以降、国の行財政改革の一環で06年度から5年間で5%の人件費削減が大学にも課された。多くの大学は退職教員の補充をせず、人件費の安い非常勤講師で穴埋めするようになった。
 非常勤講師の日当や宿泊費などの経費削減も広がっている。鳥塚さんの場合、埼玉大から交通費に加算して支払われていた日当が08年度に廃止され、昇給もなくなった。「年金や健康保険も全額自己負担で、パート労働者以下。『そのうち非常勤講師も減らすかもしれない』とも聞いた」。法人化で教員ポストが減り、雇用自体への不安が募る。
    ■   ■
 東京外国語大は来年度、語学を担当する任期付き外国人教員を契約更新したり、新たに採用する場合、給与を約3割減らす。「優秀な外国人教員が来なくなり、教育の質が低下しかねない」。東京外大教職員組合の鈴木茂・副委員長は憂う。
 国からの運営費交付金が減り、単科大学では競争的資金の応募分野が限られるため、収入を思うように増やせない。結果として外国人教員の人件費を削り、それを原資に語学教員らを増やすしかなかった。亀山郁夫学長は「この大学の教員は、もともと総合大の倍は授業を持つ。国は(総合大と同じように交付金を減らし)貧乏人からも搾取するのか」と怒りをあらわにする。
    ■   ■
 経費削減を迫られる国立大は、「人」を犠牲にせざるを得ないのか。
 小宮山宏・三菱総合研究所理事長は昨年まで務めた東大学長当時、ある財界人に「大学は1%ずつ国の交付金を減らされて……」とぼやいた。すると「毎月1%ですか」と聞き返され、民間企業のコスト削減への真剣さを実感したという。
 東大は05年から2年間、民間の「調達のプロ」を招いた。法人化後も、「予算が余ると困る」という公務員文化が根強かったためだ。日産自動車から東大調達本部に出向した増尾次男さん(52)は「同じものを安く買うことに執着するよう、まず意識改革に取り組んだ」と振り返る。
 他の国立大学長らは「東大だからできる」と冷ややかだが、小宮山さんは「国立大はもっと安くモノを買える。人件費や研究費を削る前に、まだ効率化できるところはある」と強調する。=つづく▲

「「労労対立」越える試み 正社員賃下げ、契約社員賃上げ」

■「労労対立」越える試み 正社員賃下げ、契約社員賃上げ
 (2010年3月11日0時26分 asahi.com[経済を読む])
http://www.asahi.com/business/topics/economy/TKY201003100499.html
(【写真】回収してきた紙ごみを搬送車から下ろす春江の社員ら。正社員と契約社員が一緒に作業する=東京都江戸川区)
 連合が、非正社員を含むすべての労働者の条件改善を初めて目標に掲げた今春闘。非正社員の処遇向上には、利害が対立することもある正社員の理解が欠かせない。東京都内のごみ収集会社では、長い時間をかけて両者が歩み寄り、同じ労働条件を実現した。
 ごみ収集運搬・リサイクル大手「春江」(東京都)は16日から、従業員の大半を占める作業員について、休憩時間と固定残業を含む拘束時間を、正社員か契約社員かにかかわらず10時間半に統一する。
 これまでの制度では、賃金が低い契約社員の拘束時間が1時間長い。新制度では正社員の固定残業を30分延ばし、契約社員は30分短くする。日給は変えないため、実質的に正社員は「賃下げ」、契約社員が「賃上げ」になる。
 都内23区で自治体や企業のごみ収集を手がけ、正社員と契約社員を合わせて約150人の作業員が働く。仕事は搬送車の運転やごみの積み下ろし、仕分けなど。仕事内容は同じなのに契約社員は正社員と区別され、もともと拘束時間に2時間の差があった。
 1999年に労組ができると、翌年にはすべての従業員が加入するユニオンショップ協定が結ばれた。労組が中心になって是正に取り組み、01年に拘束時間の差を1時間に短縮。そして今年、同一条件を実現した。
 島崎裕久委員長は「会社や正社員から反発を受けながらも信頼関係を築いた結果。それでも10年かかった」と振り返る。作業員の中に占める契約社員の割合が、約10年前の25%から67%まで増え、契約社員の声を無視できなくなったことも背景にある。
 作業が効率的になるように収集ルートを見直すなど経費削減で経営側に協力。正社員の理解を得るために、55歳以上になると2割減給される就業規則の規定の廃止を同時に実現した。経営側が人件費増につながる要求をあえて受け入れたのは「意識も統一されて生産性が高まる」(白輪地義明専務)からだという。
 路面電車で知られる広島電鉄(広島市)の労使は昨春闘で、契約社員の「正社員化」で合意した。契約社員の乗務員は労働時間が30分長く、昇給も退職金もなかった。3年越しの労使交渉が決着したのは、正社員が非正社員のために給与を削ることで歩み寄ったからだ。給与削減に10年かけるなどの緩和措置や5年間の定年延長などで人件費が3億円以上増える計算だが、経営側が受け入れを決断した。
 パートとの共闘など、徐々に非正社員と連携する動きは出ており、連合は「正社員と非正社員を対立させる労労対立でとらえず、経営側も譲り合う交渉が必要だ」(幹部)と強調する。ただ、正社員のベア要求がままならない状況で、春江や広島電鉄のような動きは少ない。(宮崎健)▲

「東京管理職ユニオン」作成の労働相談マニュアル

■働くナビ:労働相談の受け手向けに、マニュアルができました。
 (2010年3月15日『毎日新聞』東京朝刊)
http://mainichi.jp/life/job/news/20100315ddm013100025000c.html
 ◆労働相談の受け手向けに、マニュアルができました。
 ◇心の健康保つ方法指南 精神的不調な人の相談増加で
 職場のトラブルで、うつなどの精神的な不調を訴える人が増え、労組のほか、上司や人事担当者らが労働相談を受けるケースが多くなってきた。メンタルヘルスの素人が、精神的不調を抱える人の相談を受ける際には注意が必要だ。相談者への配慮だけでなく、自分も心の不調に陥る恐れがあるからだ。個人加盟労組「東京管理職ユニオン」(東京都新宿区)は、相談の受け手向けに無料の相談マニュアル冊子を作った。企業側にも役立ててほしいという。
 ●職場の変化が原因
 厚生労働省によると、精神障害による労働災害の請求や認定件数が増えている。同省は、06年に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を作り、職場のメンタルヘルス対策を促してきた。昨年10月には、同省のホームページ上に、労働者、家族、上司・同僚、産業医それぞれに向けた情報をまとめたコーナー「こころの耳」を設けて情報発信している。
 原因の一つに、職場の変化がある。以前は年功序列の中で、班単位の仕事をして仲間意識も強かった。しかし、成果主義の導入で部下もライバルになるなど、職場が分断されているという。
 同ユニオンには昨年1年間に約330人が労働相談に訪れた。相談担当者の実感として、3人に1人になんらかの精神的不調が見られたという。この傾向は、関西の個人加盟労組でも同じ割合だった。
 相談マニュアルは、同ユニオンの担当者の相談経験をはじめ、判例、国の制度などを基にして作った。精神的不調の当事者向けの手引本はあるが、相談担当者向けは珍しいという。
 ●実践的な内容に
 内容は11章で構成。相談を受ける側の心構えをはじめ、「長時間労働」や「いじめ」「セクハラ」などの問題に対処する基礎知識、職場復帰の際の労使双方に求められる配慮--など実践的な内容を盛り込んでいる。
 例えば、自殺願望者からの労働相談では、頭ごなしに「自殺をやめなさい」などと言わないように注意を促す。相談者は「自分の気持ちを理解されなかった」と受け取りがちなためだ。聞いた上で「よく自分の思いを話してくれた」などと、受け止める言葉を、あっさり言うのが秘訣(ひけつ)だと紹介している。
 相談担当者の心の健康に触れた部分も特徴だ。例えば、相談者が職場の上司への暴言を繰り返した場合、そのまま聞き続けると、聞く側にストレスがかかり、体調を崩しやすくなる。このため、「相談者と距離を置く」「携帯電話番号を教えない」などの心の守り方も助言している。
 同ユニオンの千葉茂書記次長は「行政や企業の人事担当者から相談方法について助言を求められることもあり、使用者側もメンタルヘルス相談に苦闘しているようだ。労使が共通のマニュアルを使えば、休職した人をスムーズに復職させられるなど利点がある」と呼びかける。96ページ。問い合わせは同ユニオン(03・5371・5170)。【遠藤和行】
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 ◇労働相談マニュアルの主な内容
 【相談を受ける心構え】
・話は白紙から聞く
・一番大事なのは、本人の一言目
・分からないことは「分からない」と言う
・相談は、相談者の自信を回復させること
 【トラブル対応の基礎知識】
・勤務から解放される時間の不足が精神的健康を破綻(はたん)させる
・上司は業務量を適切に調整する措置を取らねばならない
・労災申請や裁判提訴は、「悔しさの再現」になるため慎重な判断が必要
 【職場復帰の注意点】
・会社が「ゆっくりやすんでください」というのは要注意
・会社と一緒に復職プログラムを作る
 【相談の受け手の心を守る】
・相談者と距離を置く。自分で考えてもらうために場合によっては突き放す
・相談者の上司などへの暴言は黙って聞かず、指摘して批判する
・相談活動とプライベートは時間的にも空間的にも分ける▲

「若者に無責任だった時代」

■記者の目:若者に無責任だった時代=北村龍行(元論説室)
 (2010年3月9日0時06分『毎日新聞』)
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20100309k0000m070109000c.html
 日本の混迷という場合、原因が国内にあるものと、海外にあるもの、そして国内と海外の双方にかかわっているものとが考えられる。
 原因が国内にあるなら、実態を調べ、海外の経験にも学んで、合理的な解決策を見いだせばよい。原因が海外にあるのなら、日本だけでは解決できないのだから、まずは混迷を甘受するしかない。原因が国内・海外にかかわるものであれば、関係国の集まりや国際世論への働きかけなどで、混迷から抜け出す努力を続ける必要がある。
 政治家とカネの問題や、民主党の政権担当能力への不安など国内型の混迷は、他ならぬ我々の選択によって権力を得た人々が引き起こした混迷なのだから、我々自身が解決策を模索するしかない。
 現在の世界同時不況は典型的な海外発の混迷だから、日本だけでは解決できない。だが、特に若年層の雇用の悪化を最小限に食い止める対応策は国内だけでもあるはずだ。
 環境問題や日米関係は、原因が国内・海外にかかわる典型的な混迷だろう。国際的に協調していくことになる。
 現在の混迷をこのように考えると、日本が主体的に取り組めて、しかも最重要な課題とは、若年層(といっても、就職氷河期の最初の世代はすでに30代後半に差しかかっている)の雇用の確保である。もちろん、自らの創業への支援でもよい。
 近々、中国に抜かれるとはいえ、現在は世界第2位の経済大国である日本の若者たちが、将来に希望を持てないという状況は異常である。しかも、若者から希望を奪った就職氷河期は、05年から08年までの短い雪解けの時期を挟んで、93年から延々と、現在もなお続いている。
 その間、就職できなかった既卒者は、毎年積み上がり続けている。政治はもちろん、労働政策の担当部署も企業も学校も労働組合も、そしてメディアも、責任と能力を問われざるを得ない。
 将来への希望を次の世代に引き継げなかった我々は、自らの世代の安心・安全を優先して、若者たちが道を開く試みに対する尽力を怠った、無能で、次世代に対する責任感の乏しい世代であった。
 企業の社会的責任(CSR)の最大の責務は、納税とともに雇用の確保である。また、労働組合は、労働者が団結して働く者の権利を守るために法的な権利や保護が与えられている存在である。その意味で、企業も労働組合も、その社会的責任を果たしてきたとは言いがたい。
 さらに若年層の就職難と低所得化は、少子化問題にも影を投げかける。将来の仕事や所得に希望を持てないのに、子どもをつくろうと考えるはずもないのだ。かれらに、仕事や希望を引き継げなかった我々は、無意識のうちに、少子化も促進させてしまった。
 何をなすべきか。問題は、新卒採用の機会が一生に一度しかないという硬直性にあるなら、答えは意外に単純だ。
 高校や大学は、まず、授業料を免除した無料留年制度を導入すべきだ。これにより、何度でも新卒採用に挑戦できる仕組みができる。企業の方でも、採用枠の限界から採用できなかった人材を、翌年、採用できるメリットがある。
 企業は、現在の在学生対象のインターン制度を、既卒者にも開放すべきだ。将来の正社員候補として彼らを位置づけ、事務費ではなく人件費として給与を計上すれば、会社とモノの関係ではなく、会社とヒトの関係になる。その意識改革の持つ意味は大きい。
 そしてかれらを、将来の人材として訓練すれば、コストはさほど増えず、得るものは大きい。企業の社会的責任を果たすこともできる。
 行政は、十分に保護され、権利を与えられている正社員(企業別労組組合員)の権利だけを保護の対象とすべきではない。既卒者を含むインターンや、住所を持たない労働者の権利を守り、保護する政策を検討すべきである。かれらには、人生の可能性を試みる機会と、その間の保護が与えられるべきだ。
 しかし、これは根本的な解決策ではない。貧しい弥縫(びほう)策に過ぎない。過去の既卒者の問題が残ってしまうし、先進国が行ってきた大量生産・大量消費の経済構造の主舞台が中国などの新興国に移った現状に対応するものでもない。
 本当の課題は、大量生産を新興国に委ねた後の、先進国経済の在り方にある。先進国において新たな雇用を生み出すのは、おそらく、生産拠点を新興国に移してしまった大企業ではない。
 大量生産できない、また大量消費すべきではない財やサービスを供給する無数の中小企業や零細企業、個人が雇用を生み出すことになるだろう。価格を、原材料費と生産費と利益の合計ではなく、製作者の生活費から逆算する経済である。若者たちと共に、そうした経済を可能にする財やサービスの創造が求められる。(東京市政調査会「都市問題」編集長)▲

『主婦パート 最大の非正規雇用』

■正社員の夫たちの問題でもある~『主婦パート 最大の非正規雇用』
 (2010年3月12日 nikkei BPnet)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100310/215138/
 (NPO連想出版 新書マップ編集部 川井 龍介)
 主婦パートは「アリ地獄」。すり鉢状の穴に落ちて、もがいてもはい上がれないアリを想像するとぞっとするが、それとパートで働く主婦は同じというのだ。育児など家庭内の“仕事”もしなくてはいけないという責任があり、その制約から仕事をあれこれ選べるほどの自由はない。低賃金、低待遇でも甘んじるしかない。本書は、こうした主婦パートの置かれた厳しい現状を、さまざまな面から考察する。
 著者は、経営学博士で、スーパーマーケットやファミリー・レストランなどの人的資源管理や組織行動などを専門とする。中高年のリストラや派遣社員の雇い止め、あるいは若者の就職難など、昨今は働くことをめぐる問題が、新書のテーマになっているが、パートについてこれだけ正面からとらえたものは初めてだろう。
 本書にあるように、総務省の「平成一九年就業構造基本調査」によると、正社員は3430万人であるのに対して、非正社員として働く人々は約 1890万人。そのうちパートタイマーは約1300万人で、主婦パートは800万人。つまり、主婦パートは非正社員全体の4割強を占めている。
 ところで、パートとは、パートタイム労働法で「一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い労働者」と定義されている人たちのことで、アルバイトあるいは準社員などと呼ばれている人たちも、この定義にあてはまればパートタイマーとなる。
 ただ、この中で育児や家事を担いながらパート労働をする主婦パートが抱える問題の特殊性を本書は浮かび上がらせる。簡単には辞められないという主婦パートの弱みに企業はつけこんで待遇改善をしようとせず、一方で仕事のできる主婦パートを中心にして、パートでありながら社員並みのあるいはときにそれ以上の役割と責任を負わせる。パートであってもサービス残業をせざるを得ない。
 また、彼女たちの家庭内をみれば、特有の問題があるという。あくまで統計上の結果だが、キャリアをもつ既婚女性であるキャリア・ワイフや専業主婦に比べて、家事・育児に対する夫の協力は少なく、夫婦関係の調和はよりとりにくいというのだ。子供を生んでからそれほど休む間もなくパートの職に就いて、育児と家事に追われて、おまけに夫との関係も調和がとれない。これに介護の問題などが加わってきたらどうなるか。
 こうした主婦パートの置かれた状況を変えるには、雇用関係を変えることが必須で、具体的には「パートタイム正社員」をつくるべきだと著者は主張する。パートの人件費を上げたら経営がもたない、と反論する経営者に対しては、「人件費の削減によって会計上の『生産性』や利益をかさ上げするのではなく、ビジネスの中身をよく検討して『生産性』や利益を向上させるための方策をとり、人件費に見合うようにするのが本物のマネジメントである」と、力を込める。
 そもそもは1950年代後半に大丸百貨店東京店がパートタイマーという名称で人を募集したのが始まりだというパートは、いまや日本の産業を下支えしている。パートの低賃金、低待遇は、正社員の待遇をも下げる現状につながっているということを考えれば、主婦パートの問題は、正社員として働く夫たちの問題でもあることがわかる。▲

◆『主婦パート 最大の非正規雇用』本田一成 著/集英社/735円 [kinokuniya]

「失業、期間労働者で2倍--2月調査」

■非正規雇用労働者:失業、期間労働者で2倍--2月調査
 (2010年3月2日『毎日新聞』東京夕刊)
http://mainichi.jp/select/biz/news/20100302dde041020038000c.html
 厚生労働省は2日、2月の調査で、今月までに職を失ったか失うことが決まっている非正規雇用労働者が、1月調査より5867人増加したと公表した。増加数は573人減少した。期間労働者などの割合が1月の2倍近く増え、派遣労働者が大きく減った。08年10月からの累計は26万2598人になる。
 調査は2月18日現在。新たに把握した失職者などの割合は、パートなどが52・9%(3102人)で1月に続いて最も多かった。次いで期間労働者などが32・4%(1902人)で、割合は1月(16・6%)の2倍近くに増えた。派遣労働者は8・0%(469人)で、1月(23・2%)と比べ割合は大幅に減った。請負労働者は6・7%(394人)。
 直接雇用の非正規労働者の雇い止めが増えていることについて、厚労省職業安定局は「非製造業でも雇用調整が広がったのではないか」と分析している。【東海林智】▲

宇都宮健児さん

■ひと:宇都宮健児さん 日本弁護士連合会の会長に当選
 (2010年3月11日0時00分『毎日新聞』)
http://mainichi.jp/select/opinion/hito/news/20100311k0000m070133000c.html
 消費者問題に傾けた情熱を、今度は全国約2万8700人の弁護士のトップとして、その活動全体の改革に注ぐ。再投票を経ての選出で、司法改革に伴う課題は山積。しかし、世論に訴え国を動かして多重債務者を苦しめた高金利を撤廃させた経験が、自信になっている。市民団体や消費者と手を取り合い、「市民のための司法」実現が目標だ。
 四国の小さな漁村で生まれた。小学生の時、開拓農家として家族で大分県の国東(くにさき)半島へ。朝から晩まで黙々と開墾する父を見て育った。苦労した親を楽にしたいと立身出世を目指したが「自分だけ貧乏から逃れるのは後ろめたい」と思い、困った人に手を差し伸べる弁護士を選択した。
 道は険しかった。10年以上仕事が取れず事務所を事実上クビに。挫折の中、多重債務問題と巡り合った。当時は解決のノウハウがなく、依頼者と数十の貸金業者を訪ね回り厳しい交渉を繰り返した。過酷な取り立てで追い詰められた依頼者の防波堤役にやりがいを覚えた。豊田商事、オレンジ共済、和牛商法などの事件でも被害者救済に奔走、ヤミ金融とも徹底的に戦った。
 08年末、年越し派遣村の名誉村長として貧困問題に向かい合った。「貧困や格差は10年前に取り組まなければいけなかった。規制緩和を招き人権を守れなかったのは日弁連の弱さ」と言う。持ち前の実行力で、弱者を守る取り組みに踏み出す。【銭場裕司】
 【略歴】宇都宮健児(うつのみや・けんじ)さん 愛媛県出身。東京大法学部を中退して71年に弁護士登録。卓球と藤沢周平作品の読書が趣味。63歳。

★宇都宮さんは、この集会にも賛同メッセージを送ってくださいました。

◆宇都宮健児(弁護士/反貧困ネットワーク代表)
【メッセージ】
非正規労働者の待遇改善問題は、わが国における貧困問題解決のための最重要課題であると考えます。
集会の成功をお祈り致します。

キャンパス・セクハラとパワーハラスメントの実情をまとめた2冊の書籍

■セクハラ、パワハラの実情紹介…女性労働協会
 (2010年3月10日『読売新聞』)
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/20100310-OYT8T00169.htm
 財団法人女性労働協会は、裁判例をもとに、キャンパス・セクハラとパワーハラスメントの実情をまとめた2冊の書籍=写真=を発刊した。実際に起きた事件の内容や裁判の経過を、わかりやすく紹介している。
 発刊されたのは、「キャンパス・セクハラ―そのとき、学内で何が起きたのか」と、「パワハラはこうして行われる」。著者は、厚生労働省で雇用均等行政を長く担当し、2005年から07年まで同協会の専務理事を務めた君嶋護男さん。同時期に「女性と仕事の未来館」の副館長も兼任し、同館の判例データベースの整備にかかわった。
 「キャンパス・セクハラ」によると、大学を舞台にしたセクシュアル・ハラスメントの訴訟は、一般企業や官公庁などよりも数が多く、教員らが地位を利用するなど、悪質な事例が突出して多い。「次代の担い手を育成する大学の使命のためにも、1日も早い問題解決を」と訴える。
 「パワハラはこうして行われる」では、被害者が自殺した悲惨な事例を中心に、理不尽な退職の強要や配転命令があったケースも紹介。「パワハラは部下を傷つけるだけでなく、企業の活力も低下させる」として、当事者や企業の担当者の参考になるようまとめている。
 いずれも1500円(税・送料込み)で、氏名、送付先住所、電話番号、希望する本の題名と冊数を記して同協会へファクス(03・5444・4152)で申し込む。

 同協会は17日午後2時から、東京・芝の「女性と仕事の未来館」で、「パワハラ」の本をテキストに、君嶋さんらが講師を務めるセミナーを開く。参加費5000円(書籍代込み)。問い合わせは同協会(03・5444・4151)へ。▲

「正社員から個人請負契約に切り替えられる」ことの問題

■働くナビ:正社員から個人請負契約に切り替えられる例が増えています。
 (2010年3月1日『毎日新聞』東京朝刊)
http://mainichi.jp/life/job/news/20100301ddm013100026000c.html
 ◆正社員から個人請負契約に切り替えられる例が増えています。
 ◇労働者保護の対象外に 団結権認めない判決も 労組、弁護士ら危機感
 これまで企業が雇用契約を結んで社員に任せてきた仕事を個人請負契約や委任契約にするケースが増え、トラブルが続出している。
 大卒で信販系の会社に就職し、事務を担当していた東京都内の女性(24)は就職の約1年後、会社から「仕事も十分覚えたので、個人請負契約に切り替える」と言われた。「みんなそうしている。収入も増える」と言うので了承した。仕事や働き方は以前と同じで収入は1割増えた。
 だが、給与支払いの内訳を見て驚いた。雇用保険や年金、健康保険などの欄がなくなっていた。会社は「個人事業主なんだから全部自分持ち」。女性は「収入増なんて、社会保険料を払ったらマイナス。正社員で就職したのに、解雇されたようなもの」と唇をかんだ。
 個人請負契約を結ぶ個人事業主とされたことで、働き方は同じでも、労働基準法や最低賃金法などが適用されなくなった。こうした「偽装雇用」と言える状況は国際的にも広がっており、ILO(国際労働機関)は06年、労働者と自営業者を区別する基準を、法で定めるよう勧告した。
 労基法上の労働者は「事業者に使用される者で賃金を支払われる者」とされ、個人請負は労働者とならない場合が多い。だが、労働組合法は労働者を「賃金に準ずる収入によって生活する者」と規定し、個人請負も労働者とされるとの考えが一般的だ。つまり、労基法の適用は難しいが、労組法の適用対象となり団結権や団交権などは認められる。労組を作ったり、加入することで、企業の一方的な契約解除や請負報酬引き下げなどに対抗することができる。
   *
 ところが、個人請負が労組法の労働者にあたるか否かで、争う例が増えている。労組に加入し、労働条件改善などで団体交渉を申し込んでも「自営業者だ」と拒否される例だ。不当労働行為として労働委員会に申し立て、「労働者に当たる」との命令が出ても、裁判で取り消されるケースが相次いでいる。
 危機感を持った全労連などの労組は2月6日、都内で「労働者性について考える」と題したシンポジウムを開いた。キッチンなど水回りの修繕を業務委託契約で行っている人や音響機器の保守・修理を個人請負で行う人らが参加。いずれも、いつ契約を解除されるか分からない不安や、請負料金の引き下げなどに反発して労組に加入。労働委員会では労働者性を認められたのに、裁判では否定された人たちだ。
 シンポで労働問題に詳しい宮里邦雄弁護士は「裁判所は契約の形式や文言だけで労働者性を否定しているが、会社からの仕事を拒否できるのか、指揮命令を受けて働いているのか、この仕事の収入が生活費のほとんどを占めているのかなど、実態面から判断しないといけない」と指摘。近畿大法科大学院の西谷敏教授は「企業はコストカットなどで正社員を非正規に、今度は雇用責任を放棄して非雇用とも言える個人請負にするケースが急増している。こうした状況の中で『労働者』の範囲を狭めれば、法的な救済を受けない労働者が拡大する」と批判した。
 個人請負で働く人は約200万人に達するとも言われる。労働者性の規定次第では、不況下で「偽装雇用」がさらにはびこる可能性もある。【東海林智】▲

主催者の感慨……

実行委の井上・小川両名(@くびくびカフェ)による集会の感想文がUPされています。ご覧ください。

◆夢のような集会でした
 (2010年3月2日 「京都大学時間雇用職員組合 Union Extasy」)
http://extasy07.exblog.jp/12235635/

<JANJAN>の集会記事(写真つき)

■許せない! 大学労働者有期雇用制度と雇止め
 (2010年03月02日 JANJAN)
http://www.janjannews.jp/archives/2784741.html
「 ここ数年、非正規雇用(割合)増加が問題となっていますが、大学でも本来例外であるべき有期雇用が横行しています。
 そうした中、多くの大学労働者が雇止め期限である年度末を迎えようとしています。その一ヶ月前の2月27日、「なんで有期雇用なん!?大学非正規労働者の雇止めを許さない関西緊急集会」が開催されました。[……]」

集会参加記

●掲載ありがとうございます●

◆大学非正規労働者の雇い止めを許さない集会
 (2010-02-28 03:04 「ソウル・ヨガ(イダヒロユキ)」)
http://blog.zaq.ne.jp/spisin/article/1306/

◆なんでなん!?集会に参加しました
 (2010-02-28 21:24 「おきく's第3波フェミニズム」)
http://thirdfemi.exblog.jp/12972965/