さぁ、私の命はおいくらか?――書評『今こそ有期雇用労働者の権利確立を!』

『労働情報』813号(2011年4月15日号)に掲載された(p.16)大椿さんの書評原稿を以下に転載します。


■さぁ、私の命はおいくらか?――書評『今こそ有期雇用労働者の権利確立を!』
 =有期労働契約の法規制=学習資料編集委員会編/頒価300円
 ◇評者:大椿裕子(大阪教育合同労組/関西学院大学雇い止め解雇事件当該)

 名古屋の2人の弁護士が、有期雇用労働者が交通事故で死亡した場合、その損害賠償は、全産業の平均賃金を適応するのは妥当性に欠く。相当程度減額した上で算定すべきという論文を書いていたことを本書で知った。
 昨年3月末、有期雇用を理由に大学を雇い止め解雇になった。それ以前も従事した仕事の多くが非正規。大して有名な大学も出てないし、女だし、37歳で未婚だし、子どもいないし!一体私の命の値段、どんだけ買い叩かれんねん?そう考えていたら怒りや悲しみを通り越し、もう笑うしかなかった。
 私が雇い止め解雇撤回を求め、組合に入り争議を始めた頃、家族、友人、同僚、新聞記者や地方の政治家も「言っていることは正しいが、一旦契約したものを撤回できるわけがない」と言った。団交に出席した大学理事からは「有期雇用に納得して契約したのだから、それはあなたの自己責任」と言い放たれた。その度に「オカシイのは私か?」と気持ちが揺らいだ。「恒常的な業務を有期雇用にすること自体が問題」という確信に辿り着けたのは、組合や、同じように声を上げた有期雇用労働者の存在があったからだが、当時、本書のように有期雇用の問題点を体系的かつ簡潔にまとめたものがあれば、私は自分を責めることから早い段階で解放されていたかもしれない。
 かつての私のように、オカシイと感じながら確信が持てず、「変えられない」と諦めている有期雇用労働者たちに、そして、薄々有期雇用の限界を肌で感じていながら見ぬふりをしている使用者達に、互いがこの問題に向き合う導入として、私はこのパンフレットを手渡して歩きたい。
 有期雇用は変えられる!▲

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