「60代前半の就業率は6割強・女性の5人に1人はパートやアルバイトに」

■60代前半の就業率は6割強・女性の5人に1人はパートやアルバイトに
 (2012/03/18(日)19:55 サーチナニュース[コラム])
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0318&f=column_0318_008.shtml
 厚生労働省は2012年2月22日、中高年齢者に対する継続的な調査「中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)」の第6回調査結果を発表した。それによると60~64歳の高齢者のうち仕事をしている人は6割強に達していることが分かった。役員や正規職員は15%ほどに留まり、残りは自営業者や非正規職員、内職などに従事している。男女別では女性の方がパート・アルバイトでの仕事率が高く、仕事をしていない率も高めの結果が出ている。また5年前に「60歳~64歳の時点での就労状態の希望」を確認した際に「仕事はしたくない」と答えた人でも3割近くが、現時点で仕事をしているのが確認できる(【発表リリース】
 今調査は2005年10月末時点で50~59歳だった日本全国の男女を対象に、その時点以後継続的(毎年1回・11月第一水曜日)に同一人物を対象に行われているもの。今回第6回における対象者年齢は55~64歳、2010年11月3日に実施している。調査方法は調査票郵送・被調査者自己記入・郵送返送。回答数は2万6220人、そのうち第1回~第6回まで集計可能な2万5157人分を集計客体としている。調査母体全体では55~64歳であるが、今件項目ではその中から60~64歳の者を対象とし、集計している。
 60~64歳といえば、昨今では年金支給開始歳と絡み定年が延長されている事例もあるが、早い人は就労先を定年退職で辞めている歳である。その年齢層における就労状態を尋ねた結果が次のグラフ。全体では62.0%の人が何らかの形で仕事をしている結果となった(四捨五入の関係のため、「している」「していない」を足しても100%にはならない場合がある)。
 未だに正規社員として勤めている人、そして会社などの役員として従事している人は合わせて15.0%。「仕事をしている」のには違いないが、大部分は非正規の職についているのが分かる。
 就労関係の記事で良く「高齢層になると一端正社員としての座を離れ、嘱託として再雇用される事例が多い」と伝えているが、その事例(派遣や契約社員も合わせ)は全体で1割強、男性では2割近くに達している。また女性の多くはパートやアルバイトに従事している。これもそれ以前(60歳より前)の就業状態の継続によるものと、容易に想像できる。
 これを5年前の時点で「60歳を過ぎても働きたいか否か」を尋ねておき、その回答別に区分して、「調査時点(実際に60~64歳になった時)で」就労状態を改めて聞いた結果が次のグラフ。当然の話だが「働きたい」と思っていた人は、全体平均よりも高い就労率を見せている。
 とりわけ女性は就労意欲に対する連動性が高く、仕事をしたいと考えていた人としたくないと考えていた人の差が約3倍となっている。見方を変えると「働きたくない」と思っていた人でも実際には3割近くの人が働いており、「5年の間に心境や環境に変化が生じた」「働きたくは無いが働かざるを得ない」状態にあるのがうかがえる。高齢層の就労に対する状況がすけて見えてくる結果となっている。
 今調査は継続的に同一人物に対して行われていることや、調査対象母体が比較的多数であることに加え、今後社会問題として大きくクローズアップされるであろう、定年退職前後の世代の動向を知る上で貴重な内容となっている。今後、今件以外でも必要と思われる項目について、詳細を眺めて行くことにしよう。(情報提供:Garbagenews.com)▲

「厚生年金の適用拡大」

■厚生年金の適用拡大
 (西日本新聞[ワードBOX]2012年3月22日掲載)
http://www.nishinippon.co.jp/wordbox/word/6630/8811
 非正規労働者の厚生年金への加入要件を現在より拡大する政策。政府・民主党は(1)年収94万円以上(2)従業員500人超の企業に勤務(3)労働時間週20時間以上(4)勤続期間1年以上-を全て満たすことを新たな加入要件に決めた。対象は推定約45万人。目標は約370万人だが、パート雇用が多い流通・外食産業などが新たに生じる保険料負担に反発して縮小された。2016年4月実施を目指し、関連法案が今国会に提出される。
◆厚生年金加入拡大 問題点は 労働時間削減 抜け穴に 企業監視の制度必要
 パート従業員が厚生年金に加入できる要件を緩和する適用拡大案を政府・民主党が決めたが、新たに加入できるのは「政府予想の45万人より大幅に少ないのでは」と心配する声が、パート現場をよく知る女性たちから出ている。パートの厚生年金加入で生じる保険料負担を嫌う企業では、労働時間を削減するなどして加入要件以下に抑える手法がまかり通っているという。要件が緩和されてもこうした“抜け穴”は放置される恐れがあるからだ。
 「働く当事者の声は届かなかった」。パート女性らでつくる「均等待遇アクション21」事務局の酒井和子さんは、13日に発表された民主党案に失望した。その6日前、適用拡大を求める要望書を前原誠司政調会長に手渡したが、出てきた数字は45万人と、政府が目標とする370万人のわずか1割余り。産業界の猛反対を受けた結果だった。
 「実際の加入者はさらに少ないだろう。企業は労働時間や年収を要件以下にして加入を防ぎ、その上で仕事をどう回すか、方策を研究するはず」と酒井さんは指摘する。
 現行制度では労働時間が正社員の4分の3(週30時間)以上あることが加入の要件。それを「20時間以上」に下げて加入者を増やすというのが民主党案だ。しかし、現行制度でさえ守られていないという。連合の総合男女平等局で総合局長を務める中島圭子さんは「要件を満たしているのに入れない人が2割はいる」と見る。
 ある企業で週30時間以上働くパート女性は「厚生年金に入りたい」と上司に切り出すと「時間を削る」とほのめかされた。契約更新をしてもらえなくなる不安を感じ、やむなく引き下がった。中島さんによると、不利な勤務条件を押し付けられる例は後を絶たない。「加入すると(本人が負担する)保険料の分、手取りが減るよ」といった説明を受け、言われるまま、本人が労働時間を短くするケースも多い。
 「立場の弱さや年金の知識が乏しいのをいいことに『パート自身が加入を望まない』と企業が言うのは許せない。対象拡大に実効性を持たせるなら、企業監視の仕組みが必要だ」と中島さん。
 今年1月、勤め先に掛け合い厚生年金に加入できた団体パート職員の高沢亜美さん(38)。保険料はそれまでの国民年金より月約7千円も安くなり、将来受け取る年金額も増える。「安心感を得て何事も前向きに考えるようになった。雇い主に大事にされているという思いが働く意欲につながる」と言う高沢さんは「将来の不安を抱える非正規雇用者全員が加入できるようになれば」と願う。
 パート労働に詳しい日本女子大学教授の大沢真知子さんは「ドイツは、人を雇用すれば労働時間の長短にかかわらず企業に保険料負担が発生する仕組みにした。こうした制度がないと、企業が負担を逃れようとする動きは封じ込められない」と話していた。▲